「遅刻」

すでに小学校へ登校する児童は誰れもいない通学路。 校門前の横断歩道を渡ろうと女の子が一人立っている。

小学2年くらいのその子は赤いランドセルに大きな手提げ鞄を持ち、右へ左へのらりくらり歩いているのが、数十メートル後方にいる私から見えていた。

追いついて、横断歩道を一緒に渡る。

渡りながら、「遅刻じゃない?」と話しかけた。

「うん、お母さんが・・」 と口ごもる。

その顔つきを見ながら、「お母さんが寝坊しちゃったんだ」 とわざと明るく笑顔で言ってみた。  女の子も笑っている。

校門の所で別れ際、「がんばって教室へ行くんだよ。 お友だちが待ってるから」と私。

「うん」、思いがけない笑顔の返事、バイバイと手まで振ってくれた。

別れた後、歩きながら、教室まで私が一緒に行くべき逡巡を悔やみ、同時にあの子の母親に対して腹が立ってくる。 ヒステリックに娘を送り出し、だらしなく寝ている姿が浮かぶ。 この不況下、深刻な状況にある親なのかもしれないけど。 

わが身を振り返れば、遅刻というルール違反のうしろめたさを抱え登校する心細さは察しがつくはず。 親として娘を起こしてやれなかったことを詫び、せめて校門まで母娘が手をつなぎ登校できなかったのか。

私へにっこり笑顔で手を振る少女のいじらしさが、妙にせつない朝だった。


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