「冬の朝の楽しみ」

☆2006年に亡くなった愛犬マリンとの日常で見つけた雪への感動を書いた私のエッセイを紹介します。 数年前の丁度今頃、1月の終わりに書き上げたものです。

『まだ明けやらぬ午前6時、いつものように目がさめる。 半年前に亡くなった愛犬マリンとの散歩は15年間続き、私の体内時計はいまだに刻まれている。

起き出して居間のカーテンを引く。 外は雪がちらほら舞っている。 お茶を飲むための湯が沸く間、朝刊のいつもページに目をやる。 最高気温マイナス6度、最低気温マイナス14度とある。 先ずは気温からのこの癖は、冬の朝の楽しみを見つけた時から始まった。

数年前、散歩が大好きなマリン(ハスキー犬、雌、黒灰色、ブルーアイ)を犬舎から出すために鍵を開けようとしていた。 そのとき、私が着ているダウンコートの袖に舞い降りる雪、雪、雪・・・。

六角形や三角形、針状のもある。 まさに書物で見た雪の結晶そのまま。 中心から精密にデザインされ樹枝状に伸びる枝が完璧な対称形に見える。 ガラス細工の透明感と繊細で巧みな芸術品を目近にして思わず息を呑む。 1-2ミリのが多い中、稀に5-6ミリのを見つけると子どものようにはしゃいだ気持ちになった。 が、自然からの見事な贈り物は、次々と私の袖にくっついては惜しげもなく丸い水滴に変ってしまう。

「ウオーン、早く出してよぉ~」と犬舎の中のマリンが大きな声で私へ訴えてくる。 我に返り、急いでドアを開けてやる。 待ってましたの勢いで飛び出し歩き出そうとするマリンの頭にたちまちたんぽぽの綿毛みたいな雪がふんわり乗っかる。 それ見たさに思わず目を凝らす私。 さっさと行くよと言わんばかりに、ブルンと全身を震わせ雪を払い落とすマリンだった。

そんなことを思い出しながら、湯の沸く音に立ち上がる。 熱いお茶を一口飲み、「久しぶりに散歩してみるか・・」。 明るくなった窓の外は、雪がまだちらほら舞っていた。』


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